2007年8月28日火曜日

「蝉しぐれ」を観た

珍しく、日曜日の夜、家にいたので、せっかくなんで、テレビでやってた「蝉しぐれ」を。

うっかり、山田洋次監督の作品かと思ってました。一連の、藤沢周平原作モノのアレかと。違いましたね。お弟子さんが監督みたいです。

さて、内容ですが・・・。
ひたすらスクウェアな構図のカットで推していくワケです。まずは、とにかくそこが新鮮で。逆に。

で、主人公は市川染五郎さんが演じるんですが、その少年時代を演じる役者さんがとにかくイモで、酷いな、と。その相手役のカワイイ女の子は、びっくりするくらい上手で、逆に主人公のイモ役者っぷりが浮き上がりまくりで、「これでイイのか?」と何度も首を傾げながら・・・。

なんていうか、ある程度“その世界”に引き込むような仕掛けが欲しいんですよね。時代劇って。
ま、時代劇に限らないことだと思うんですが。
例えば、鬼平犯科帳だと、あの激シブのナレーションですよね。あの声の発声一発で一気にその世界に持っていかれちゃうワケで。この作品には、どうもそういうアレがない気が。
ま、俺がそう感じただけですけどね、あくまで。

で、その、少女が成人すると、木村佳乃さんになるワケですが、あんまり顔が似てないんで、そこでも「ムムッ?」と。

ところが、その何カットか後に、引き裂かれてしまったその想い人(染五郎さんのこと)が、未だ独り身であるという事実を本人の口から告げられた瞬間の佳乃さんの表情が素晴らしかったのです!
「ここかっ!」と。

幼馴染であり、お互いの初恋の相手であり、しかし運命によって、満足に別れの言葉を交わすことも出来ないまま引き裂かれてしまった2人の、そんな2人の久方ぶりの再会であったにもかかわらず、私的な言葉を交わすことや、ましてや抱擁など全く許されぬ間柄になってしまった、みたいな云々の全てが、その瞬間にググッとくる、という。
「なんと切ないんでしょう!」と、この作品がど真ん中のオバサマ方はハンカチを噛むのでしょう。
そんな、キラー・ショットでした。木村佳乃、恐るべし。

あとは、ラストの、主人公2人が語らうシーン。なんか、構図的には変な角度の画が続くんですが、それは、2人を隔てる障子を入れ込む為の画なんですね。
その障子が、その、ついに結ばれることのなかった2人の間にあったモノのメタファーになってるワケです。その、非常に分かり易い“メタファー使い”も、ちょっと良かったですね。ちょっとしつこい気もしたけど、そこを持っていく、染五郎さんと佳乃さんの演技力の素晴らしさ、ということで。
正直、スゲェなぁ、と、思いました。


でも、やっぱり、その、画がちょっとイマイチだったかなぁ。時代劇だから、やっぱりロケとかに制約がもの凄いあるっていうのは、良く分かるんだけど。
例えば城下町とか、そういうショットが欲しいんですよね。それは、記号的な意味合いで、なんだけど。
ロケ場所とか予算とかで制約が色々ありまして、みたいなのが画面から伝わっちゃう感じで。
画は、なんか、寂しい感じがしました。それは、狙った“侘しさ”というのとは、また違った意味で。

いや、でも、良かったですよ。
山田洋次監督の一連の作品も、観てみます。そんな気にさせてくれる作品でした。

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