2008年8月20日水曜日

ストーリーを構造化する

結構意外な感じではあるんですが、大江健三郎さんが、新聞に持っている自分の連載の中で、「新しく小説を書き始める人に」ということを書いてまして。


ちょっと、引用しておきます。


そして小説家の修練は、なによりもまず1つの作品を作り上げることに始まります。続いて大切なのが、すぐには発表しないで書き直し始める意思の強さです。
若い小説家の第一作には、それ自体としては価値はないということか?
そうではありません。そこにはたいてい、一生それが彼の特質を成す、独自のものが含まれているのです。

ただ、その特質をまず自分でしっかり把握する(自分を発見する)為には、最初に出来た作品を書き直すことが必要なのです。若い書き手が、初めての作品を、書く前から構造化することは不可能です。しかし彼に書き直そうとする意思の強さがあれば、その作業が、彼を構造的な小説の書き手とします。つまり初めは構想出来なかったものを、次々に彼自身の具体的な表現と成し得るのです。


ということです。
同じ連載で、「新しく書き始める人へ」のメッセージを書き続ける、とも書いていますので、まぁ、勉強させてもらおうかなぁ、なんて。


ちなみに、こうも書いてます。

世界を覆っている市場原理の大波は純文学のマーケットにも及び、新人の成功には次の新人の成功が期待される。永続きする仕事を準備させる態勢ではありません。生き延びるには、多様な抵抗力を付けておく必要があります。

なんていうか、大江さんなりの“危機感”みたいのが、あるのかもしれませんね。文学界についての。
まぁ、それは、さておき。



リライトすることで、自分の書いた物語を、構造化することが出来る。
逆に言うと、構造化することがリライトの目的である、と。
「構造化」とは、具体例としては、「しかし小説の利点は、時間と空間を拡大しうることだ」とも書いてます。
心理の描写、心理風景、それを何かに投影して描くこと(直喩、比喩、暗喩)。時間軸の恣意的な拡大、歴史の描写と意味の付与、新しい登場人物の創造、対比に因る意味付け。自分が意識しないままだった何かを拾い上げること、などなど。

リライトせよ、と。その意思を持て、と。
そういうことですね。

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