2008年9月6日土曜日

動的、静的(映像的には)

NHKの深夜の再放送でやってた、「プロフェッショナル」の、羽生v.s.森内の名人戦スペシャルを観てしまいました。
いやぁ、凄かった。面白かったです。


拡大版ってことで、1時間という長さだったんですが、尺的には全然物足りないっスね。100分とかの、いわゆる“映画的な長さ”でも十分イケるでしょ、ぐらいの感じで。


その、映像的に、というか、一つの映像作品として、一つのドラマとしても、完成されていた、という。

将棋っていうのは、もちろん「勝負」なんですけど、映像的には非常に「静的」なワケです。

いわゆる「勝負」を描く映画って、それこそボクシングから、「ベン・ハー」の戦車レースから、野球やフットボールやサッカーや、色々あるワケですけど。それらは全て、映像としては「動的」な内容なんですね。
つまり、“動く画”として最初からある、と。それはつまり、映像という表現形態が扱うに相応しいトピックでもあるワケで。

だけど、「静的」な将棋であっても、十分魅力的な「映像作品」は作れるのだ、と。
その「勝負」自体を、十分魅せる作品を作り得るのだ、ということですよね。とことんその「勝負」に肉薄することで、ですね。

例えば、「静的」な勝負であっても、2人の間には極めて「動的」なやり取りがあるワケで、それを、ある意味無理やりに「映像化」する手法っていうのも、あったりするワケですよ。
アニメーションではこれは普通のアレですけど、いまは、それをCGで作ったりして。
でも、そんなことをしなくてもいいのだ、と。

うん。
NFLっていう、アメリカンフットボールのプロ組織に、「NFLフィルムズ」っていう映像部門があって、このチームが作る映像っていうのが、とても面白いんです。
小細工を一切しないで、とりあえず、スーパープレイをスローで撮る、っていうだけのことをひたすらやっている映像チームなんですけど。
これは、「動的」な素材を、ちょっとだけ「静的」な映像に加工して魅せる、という手法なんですが、引き込まれるワケですね。


で、昨日の「プロフェッショナル」は、「静的」の中にある、ごくごく些細な「動的」な瞬間を、徹底して肉薄することで浮かび上がらせる、という。
厳しい手を指された瞬間の、森内名人の「あっ」という表情なんか、最高でした。

あと、羽生さんの、“手が震える”という、アレ。
まぁ、映像的には、逆に「美味しい演出」の範疇に入っちゃうようなアレなんですけど、それが効いてて。
だって、ホントに震えてるんですもんね。


それからもちろん、盤外の2人の表情。インタビューされて語る言葉、とか。ナレーションも、もちろん。


うん。


こういう方向性って、ずっと前から、個人的に「ある」って思ってたんですが、なんか、それがズバッと目の前に現れたって感じで、そういう意味でも、貴重な再放送でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿