2009年2月27日金曜日

「記憶の棘」を観る

午後のロードショーで、二コール・キッドマン主演の「記憶の棘」を観る。

今週の午後のロードショーは、N・キッドマン特集でした。
で、この作品。ちなみに原題は「Birth」。邦題の方が詩的でいい気がします。


10年前に突然死んでしまった恋人の“生まれ変わり”と自称する10歳の少年が目の前に現れ、結婚を控えたN・キッドマンがかつての愛の“記憶”に揺れ動く、と。

いい作品でした。

低予算な感じも好感。
基本的には室内劇で、舞台はニューヨークってことになってて、セントラル・パークとかが出てくるんですが、まぁそのくらいで、だいたいアパートメント(超高級の、です)の部屋とか、あとは1階のエントランスとか、そういうシチュエーションが多用されていて。
キューブリックの「アイズ・ワイド・シャット」方式ですね。


で。
いきなり冒頭、モノクロかというぐらいのトーンの画で、グッと引きつけますよね。画の力で。
死んでしまうことになる男が、シルエットだけで登場して。とりあえず、冬の、積雪で真っ白なこのシーンのインパクトは、かなり大きいな、と。

あとは、カットの繋ぎの間。ぶつ切りみたいな感じで、妙なタイミングでつながれているんです。これが、なんか妙な感覚をずっと感じさせてて。
あとは、N・キッドマンの家族とその家の、やたら無機質な感じ。特に、そのアパートメントの、門衛がいるエントランスのショットは、印象的でした。

いろんな想像をこっちがしちゃうんですよねぇ。余計な想像を。
また、余計な想像が出来る時間的な間が多くて。
そういうのが、全部ミスリードとして生きてくる、という。
やっぱり、“生まれ変わり”というテーマだけに、ミステリアスな雰囲気が醸し出されると、そっちが気になってしょうがない、みたいなのもあるし。
だいたい、N・キッドマンの、非人間的な美しさ、というのも、ね。よく合ってますよ。


で。
実は、という部分が、個人的にはかなり好きです。イントロダクションの次のシークエンス、婚約披露パーティーでの、“奥さん”の挙動不審ぶりが、伏線として明かされて。
「あー、そうだったのか」と。
これ、よくよく考えると、そんなにたいした造りじゃないんだけどねぇ。伏線としては。そんなに凝ったアレじゃない。
だけど、俺は引っかかっちゃいましたよ。
ショートカットのN・キッドマンに見惚れちゃってただけ、というのもありますけど。(それはしょうがないっス。だって、美しすぎますから)


このストーリーはねぇ。
いいですよ。ホントに。


“裏切り”、ということですよね。
愛を裏切っていた過去。その過去を暴いて突きつけてやろうと思ってきたものの、怖くなって隠してしまう。
そして、少年が、「ボクは生まれ変わりだ」と言って現れる。
少年の、ある意味無邪気な現実逃避願望、というだけじゃない説得力が、この子役の存在感にはあって。

というより、演出サイドが、そういう風に撮ってる、ということかな。なんか物憂げな、悲しそうな表情を、冷たい、大理石に囲まれたエントランスという空間に置く、と。

そして、その少年の愛も“裏切り”であって。

それから、これは凄いと思ったんだけど、N・キッドマンがその後に、婚約者の仕事場に現れて、会議室でその男に告げる言葉。

なんだかんだで、すべて虚像なんだ、みたいな。
この痛烈すぎるメッセージ(と、俺は受け取りましたが)は、あまりに冷たすぎる。このニヒリズム。
いやぁ、と。



それから、この作品の、黒味を強調した画のトーンは、何度も書いてますけど、大好きです。
もう一つ、音が、なかなか個性的でした。ノイズみたいな効果音みたいな、そういう変な音が、心象音みたいな使われ方をしていて。それはちょっと参考になったかな。自分でやれるかどうかは、また別のハードルがあるんでしょうけど。



というワケで、なかなかの良作でした。
ショートカットのニコール・キッドマン、素晴らしいです。


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