2009年5月7日木曜日
「ブラックサイト」を観る
「ブラックサイト」を観る。
ま、ノースターなサスペンス作品なんですが、インターネットを題材にしてる、ということで、公開は去年なんですが、なんとなくアンテナには引っ掛かってた作品ではあったので。
結論から言うと、テーマは実は、そんなに先鋭的ではなかったですね。
単に、インターネット(ウェブ)を、「社会に対する復讐」のツールとして使う、ということだったので。
個人的には、「単なるツール」ということであれば、“先鋭的”だとは思わないので。
が。
実は、だからダメ、というワケでもなく、面白い作品ではありました。
ディテールが面白かったんですよね。
まず、題材が題材だけに、PCのモニターの中の映像、というのが頻出するワケですが、この「モニターの枠」というのがキモになってるんですね。
「窓枠」をチラ見せしてくるんです。ワリとしつこく。
家の外から、窓越しに家の中の様子が見えるんですが、それは、その「窓枠」が「モニターの枠」を暗示してる、という。
つまり「見られてますよ」ということを、ワリと早い段階から言っちゃってるんです。
で、その通りの展開になったりして。
“その通りの展開”っていうのは、実は何度も繰り返されてて、それはどうかと思うんですけど、ま、監督さんの意図なんでしょうね。
「空撮」が多用されてて、それが実は、犯人の動機と関係があったり、とか。
俺は、もう少し違う意味があるのかなぁ、なんて思ってたんですけど、ちょっと違いましたね。
あと、芝刈り機。
二度目に出てきた瞬間に分かっちゃいましたからねぇ。
一度目は、明らかに不自然な使い方だったんで、「?」って感じだったんですけど、それも伏線でした。
ま、その「すぐに分かっちゃう」っていうのも、ひょっとしたら演出の意図通りなのかもしれませんが。「あー、早く分かれよ」ってキャラクターにヤキモキさせられちゃう、とか。
それから、不思議なのは、第三者というか、作中では“共犯”とされている、その他諸々の人たちの映像がまったく出てこないんですね。(スケーターがモバイル機器で、というショットだけ)
これは不思議。モニターの中の、カウンターの数値だけで表現されてて。
「姿は見えないけど、確かに存在している」とか、そういうアレなんでしょうか?
ちょっとぐらいあってもいい気がしますが。
ただ、警察(FBI)の会議室の光景はちょっと奇妙で、出席者の全員が、ただモニターを見ているだけ、という画なんです。他に何にもしてない。(会議室で捜査活動は出来ないですから)
ただ殺される過程を口を開けて見ているだけ、という、ある意味一番残酷なショットが、何度も繰り返されるこの会議室のショットで。
予算の都合なんか、何かのメタファーなのかなぁ、なんて。ちょっと考えちゃいました。「無力な官僚的な捜査官たち」とか、そんななのかなぁ、とか。
で、サスペンス部分は面白いんですけど、動機が、ねぇ。
「テレビと警察」に対する犯行、ということなら、これは面白くもなんともないっス。
これだと、ウェブは、何なるツールですからね。
古典的な誘拐犯が、“電話”で身代金を要求してくる、というのと同じですから。誘拐行為に車を使って、それを乗り換える、とか、そういうのを同じ扱いですからねぇ。
そういうことじゃないと思うんですよね。
犯行も、捜査官たちも、フィールドが妙にローカルだし(何度も「ポートランド」という地名が強調される)。
ま、その辺の“期待”は裏切られた、ということで。
それはそれで、しょうがないっス。
ということで、サスペンスとしては普通に面白い、佳作という感じでしょうか。
でも、最近ならこのくらいは、それこそCSIとか、テレビドラマでもやっちゃってるからねぇ。
“映画”ですから。
もうちょっと、ね。何かあっても良かったんじゃないかな、とは思います。
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