2010年1月16日土曜日
「白いカラス」を観た
月曜日の深夜に日テレで放送していた「白いカラス」の感想でっす。
主演はアンソニー・ホプキンズと二コール・キッドマン。監督は、大好きな「クレイマー、クレイマー」のロバート・ベントン。
2003年の作品なんですが、作品の時代設定は1998年とずばり指定されています。
理由は、作中で、クリントン大統領(当時)のルインスキー・スキャンダルについて語られているから。
作品自体は、ちょっと不思議な重層構造になっていて、まず基本的なプロットのラインが、主演の2人の出会いから始まるラブストーリー。
アンソニー・ホプキンズが演じるのは、文学かなんかの大学教授で、“ユダヤ人としては初”の学部長を務めていたんだけど、黒人学生への差別発言をでっち上げられて、その“糾弾”への怒りで自ら仕事を辞める、というところが話の始まり。
で、二コール・キッドマンと出会う、と。
彼女の役は、幼い頃は裕福な暮らしをしていたんだけど、両親が離婚し、母親の再婚相手(継父)に“悪戯”(性的虐待)を受けたことから、家出をして、という“流転”の過去を持つ女。
自分の結婚相手からも暴力(DV)を受けていて、その男(エド・ハリス)から逃げている、と。ブルーカラーな仕事を三つ掛け持ちしている絶世の美女、という、まぁ、いわゆる「薄幸の美女」ですね。
この2人のストーリーが、基本のライン。
二つ目が、主人公と、森の中の小屋で“隠匿生活”をしている、ゲイリー・シニーズ(「CSI:NY」の主役の人です)演じるある作家との友情関係。
それから、ここが良く分かんないんだけど、その、クリントン大統領のスキャンダルに絡めた“言葉の正しさ”とか、そういうメッセージが微妙に語られるんですね。
主人公が“差別的発言”を糾弾される、というところに絡められてるんだけど、なんつーか、時代の空気感、ということなのか、やたら大統領のスキャンダルについての言及がある。
あんまりストーリーとは関係ないポイントで。
「ポリティカル・コレクト」とか、そういうセリフもあった気がするし(ちょっとうろ覚えです・・・)、まぁ、恐らく監督のメッセージだと思うんですが、そういうのが挟み込まれている。
で、最後の“レイヤー”が、主人公の過去。
主人公の生い立ち、というシークエンスがあり、「プリズンブレイク」の主役のあの役者が演じるんですが、このシークエンスも、ラブストーリーとは直接は関係ありません。
一応、このシークエンスを、シニーズの作家が掘り起こす、ということになってるんだけど、まぁ、ほぼ独立した形。
このシークエンスとラブストーリーが、なんつーか、どちらもいい感じなんですよねぇ。
よく出来た短編、というか。
この作品は特に、この過去のシークエンスの“ネタバレ”は避けたいので、これ以上は書かないでおこうと思うんですが、良いです。
この、主人公が抱えた“過去”と、「薄幸の美女」が抱えた“過去”。
2人が出会い、愛し合う“現在”。
う~ん。
「白いカラス」という邦題は、実はこの言い回しこそが「ポリティカル・コレクトネス」的にどうか、というのもあるんですが、なかなか上手いです。(ちなみに、原題は全然違って、「The Human Stain」というもの)
ほろ苦い結末も、個人的にはポイント高いですしね。
うん。
豪華キャストなんで、低予算ではないんでしょうけど、撮影自体はシンプルに、安価に行なわれているんだろう、という部分も含めて、なかなかの佳作ではないかなぁ、と。
ぜひお薦めです。
どうぞ。
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