2010年4月18日日曜日

「800万の死にざま」を観る

シネマエキスプレスで、「800万の死にざま」を観る。

聞いたことのないタイトルでしたが、まぁ、いいタイトルではありますよね。
舞台はLA。
ロスの太陽光を浴びて、画は終始明るいタッチでしたが、内容は、なかなかいい感じのハードボイルドでした。
こういうのは、好きですね。

主人公は、元刑事の中年のオッサン。麻薬捜査担当の刑事だったんだけど、という設定で、この主人公が、アルコールが原因で職と家庭を失い、という〝転落“のサマが結構時間を割いて描写されます。
この辺はなにげに独特かもしれませんね。ストーリー本体に関係ないっちゃ関係ないし。


で、さらに、〝事件”に巻き込まれていく過程も、独特というか、適当ではないんだけど、やや「?」な感じ。
まぁ、別にこれはこれでいいんですけど。

で。
主人公が、なんだかワケが分からないまま、結構重大な事件(というか、殺人事件)に巻き込まれていく、という。


ポイントは、主人公に相対する〝犯罪者サイド”にキーパーソンが2人いる、というところ。
一人は黒人のピンプ(ポン引き)で、もう一人が、スパニッシュのドラッグディーラー。

で、このスパニッシュの犯罪者を、アンディ・ガルシアが演じてます。
この敵役の存在感がハンパないです。(というか、後半は、ほとんどこいつがストーリーを喰ってる)

主人公と2人の犯罪者という、その3人の中央に、殺されてしまった女の親友でもある売春婦がいる、という設定なんですが、こういう構図も、個人的には結構ツボ。
売春婦役の女優さんは、個人的にはタイプじゃないんですが、まぁ、この時代の作品にはよく登場してくるタイプの女性ですね。(ちなみに、演じているのは、ロザンナ・アークエット)


で。
なんだかよく分かんないまま(A・ガルシアの描写がずっと続く)、ストーリーが進んでいき、ピンプと組んだ主人公(ピンプの部下がヤバいっス!)が、アンディ・ガルシアに取引を持ちかける、という流れ。


そして、倉庫で主人公(&ピンプ)とアンディ・ガルシアが対決するんですが、このシークエンスはホントにヤバい。
テンションが漲ってます。たぎってます。
なんにもない、だだっ広いだけの倉庫の中、というシチュエーションで、役者陣の演技のテンションとカメラワーク/カットワークだけで押し切る、という演出なんですが、緊張感も狂気も、すごいです。マジで。

この前、ストーリーの中盤で、主人公のA・ガルシアが、駐車場で、かき氷を喰いながら話すというシーンもあるんですが、そういえばこのシーンもヤバかった。
A・ガルシアの部下がずっと目の前をウロウロしている、という演出。

この「ウロウロ」っていうのがホントに肝で、とにかく誰も落ち着いてない、という。そういう作品なんですよねぇ。

で、実は、その倉庫でのバトルがクライマックスじゃない、という、そこもよく分かんないんですが、そういう流れで、ミニ・ケーブルカーを舞台にした、やや無駄なシーンでクライマックス。
ただ、話の流れ上〝やや無駄”というだけで、カット自体の力強さは、このクライマックスシーンでも、かなりのモンです。
この画の強さは、多分に適役であるアンディ・ガルシアの存在感に依っている所が大きいと思うんですが、まぁ、そういう作品なんで、ということで。


ぶっちゃけ、このシナリオは、いいですよ。
粗が目立つだけに、"核”になってる部分の強さが光る、という感じで。



なんだろうなー。


誰もが、救われない現実、みたいな所に生きてるワケですよねぇ。
主人公も、ヒロインである売春婦も、殺されてしまう売春婦も、ピンプも、ドラッグディーラーも。ウロウロしてる部下たちも。

そういう、なんていうか、社会の底辺、人生の泥沼の中で、殺しあってしまう登場人物たち。
彼らの、哀しさ、ということですよね。
ブルースとしてのハードボイルド。


うん。



あ。
それから、オープニングの空撮のショットは、やたら格好いいです。
LAの市内をただ上空から撮ってるだけなんですけど、なんか斜めのアングルで、浮遊感というか、ふわふわしてるんです。
そういう導入から話に入っていく、という部分が成功してるかはちょっと微妙なんですが、このショット自体は、すごいクール。


ということで、B級ってことになるんでしょうが、お薦めの作品だと思います。




↑のアマゾンのリンクですが、DVDは売ってないみたいです。VHS! 惜しい!

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