2012年4月17日火曜日

関係性の逆転、あるいは、関係の相互性

久しぶりに、お昼にテレビ東京でやってる「CSI」を観まして。
もうシーズン9なんですね。



で。

今回のエピソードのストーリー本編とはちょっと違う部分で、とても面白いシークエンスがあったので、せっかくなのでこのブログにアーカイブしておこうかな、と。



作品自体を久しぶりに観たので、ちょっとそこはアレなんですが、一応ざっと“前段”を説明しておくと、捜査チームの仲間の1人が殉職した、ということになってまして。
ウォリック・ブラウンという、まぁ、人気キャラなワケですけど。

で、彼の殉職を受けて、署に、カウンセラーがやってくるんです。「ER」で主要キャラ(もちろん、ドクター)を演じていた女優さんが出てくる、という、ま、タイプキャストと言っちゃえばそうなんですが、ファンには嬉しい配役で。

で、カウンセラーが「なにか話したいことがある人は、私のところに話をしに来て下さい」と言うワケです。オフィスのブースの1つに自分の席を作って、そこで、“悲しみ”とか“喪失感”を吐露しにくるのを待つ、と。

ところが、チームのメンバーは、誰も彼女の待つブースに行かない。
誰もカウンセラーの所に行かないワケです。



彼女は、辛抱強く、待つ。




で。



チームのリーダーが、ちょっと顔を出すんですね。
で、「ハンクのことで相談があるんだ」と切り出す。

カウンセラーは、「来た!」ということで、“仕事”を始める構えを作るんですが、なにぶんチームのリーダーなので、仕事が忙しい。話を始めるタイミングで、部下が捜査の進展を知らせてに来て、そこでは話が出来ずじまいになる、と。



カウンセラーとしては、誰もカウンセリングに来ないもんですから、ヒマなワケで、その「ハンク」について、署内にいる人間に、リーダーのカウンセリングの下調べも兼ねて、話を聴き回るんですね。
「ハンクって、誰?」と。リーダーにとって、その「ハンク」はどんな存在だったのか、みたいな。




ところが、話を聴いて回るうちに、「ハンク」ってのは、ペットの「飼い犬」のことだと分かるワケです。

これで、カウンセラーは、ちょっと怒っちゃうんです。「バカにしてるの?」と。
自分の仕事のことをバカにされてる気になってしまうワケですね。


もともと、刑事たちっていうのは、“弱気”を他人に見せたがらない、という職種だ、というのもあるでしょうし、とにかく、そのカウンセラーの元に誰も話をしにこない、という状況なワケで、それに加えて、最初の相談が、実は「ペットの犬」だった、みたいなことになって、さすがのカウンセラーも、頭にきてしまった、と。



で、チームのリーダーのブースに、怒鳴り込むんです。「バカにしてるんですか?」みたいなことで。




で。




・カウンセラーが怒鳴り込んでくる。「聴いたわ。『ハンク』って、犬のことだったのね?」
⇒リーダー、謝る。
⇒さらに、「訊きたいことがあったんだ」と言うリーダー。
⇒「飼い主の心情の変化が、ペットに影響を与えることはあるのだろうか?」「最近、ハンクの元気がなくってね」
⇒カウンセラーの表情が変わる。「あるわ」



その、「バカにされた」と思っていた「飼い犬の話」が、実は、カウンセラーにとっては“職分”の話だった、という展開になるワケです。
実は、それこそが、リーダーの「“喪失感”の吐露」であって、カウンセラーにとっては、それこそが「仕事の話」であった、と。


それまで、若干空回り気味だったカウンセラーは、ここで、気を取り直すワケですが、面白いのが、ここで、ホンのちょっとだけ嬉しそうな表情を見せるんですね。
そういう演技(演出)、あるいは、これは単に、俺だけがそう解釈してるだけかもしれませんが、少なくとも、そう解釈できるだけの“間”を、そこに取っている。




これは、とても面白い構図で、「患者/カウンセラー」の関係が、微妙に逆転してるんです。
カウンセラーの前に“弱者”としてやってくるハズの患者が、ここでは、カウンセラーが「仕事を求める」“弱者”となって、自分の患者の前にやってくる、というのと、もう1つ、「悲しい記憶」が、このカウンセラーにとっては「喜ばしいこと」になってるんですね。

誰かが「悲しい記憶」を吐露し始める、という行為を、カウンセラーは、待っている。

そして、誰も来ないから、苛立ち始める。
まぁ、ストレスを溜め込む、ということなワケですね。


カウンセラーが、ストレスを抱え、それを爆発させもする。



しかしそこで、患者であるリーダーが、「喪失感の吐露」を始めるワケです。
というより、実は、始めていた。

カウンセラーは、そこに気付かないままでいた、というか。




カウンセラー/患者という関係性においては、患者がカウンセラーに拠る、というのが一般的な構図であり、“描写”もそうなるワケですが、ここでは、逆転している。
「患者が存在しなければ、カウンセラーも存在できない」と。

カウンセラーの存在が、患者の存在に依存しているワケです。




まぁ、エピソードのストーリー自体にはそんなに影響がないシークエンスなんですが(多分)、さらっと挟み込んでくるのは流石って感じだし、ま、個人的に凄いそこにひっかかった、というだけでもあるんですけど。




うん。



面白かったです。

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