もう20年前か、と。
なんか、まずそんな感慨が来ちゃいました。
崔洋一監督も、なんか今やすっかり“テレビコメンテーター”だしなぁ、なんて。
(もちろん、ずっと作品は作り続けているワケですけど。)
新撰組を題材に、ということで、日本人なら誰でも知ってるワケです。
男が二人いて、片方が「トシ」と呼びかければ、その男がどんな格好をしてても、どんな背格好でも、呼ばれた方は土方歳三で、呼んだ方は近藤勇である、と。
もう、誰もが分かってしまう。
近藤勇の側に美青年が立っていれば、それは沖田総司である、と。
誰もが了解できるワケです。
そういう前提で、ストーリーが語られ始める。
どうしてこういう指摘をするかっていうと、それは、衣装のインパクトが圧倒的にあるから。
あの、水色の模様が入った羽織、というのが、新撰組の“記号”なワケですけど、あの色と模様っていうのは、ある種マンガ的、というか、それはホントに、上手く言えないんだけど、ちょっと“現実離れ”した色、というのが原因だと思うんだけど、そうなっちゃうワケですよね。
どうしてもマンガ的になっちゃう。
それを、黒を基調とした制服で、ズバッと魅せちゃう。
これは、ホントに成功してると思います。
単純にクールだし、俳優陣の人選も含めて、なんていうか、ゴツゴツした存在感、というか。
(藤原喜明の武田観柳斎とか、歩いてるだけでめちゃめちゃカッコいい。)
作品全体の色も、黒味が強調された質感になっているワケですね。
とにかく、画面全体に“緊張感”があるワケです。
色と、質感で、緊張感を与えている。
“ご存知”新撰組という題材を扱うにあたって、採用する“記号”を、意識的にチョイスしているワケですよね。
“軽薄”になってしまうような“記号”は避ける、と。しかし、そうじゃない“記号”は、使う。
近藤勇、土方歳三、沖田総司、「池田屋」という言葉、などなど。
もう一つ、この作品についての大事なトピックは、俳優陣。
松田龍平、というのはもちろんですが、ビートたけし・崔洋一の二人。
あるいは、トミーズ雅。
この三人に共通しているのは、顔、ですね。
つまり、存在感。
セリフ回しとか、別に巧くないワケです。
松田龍平も含めて、言葉を「自然に言う」という感じにはなってない。
でも、それでいい、と。
朴訥、ということだと思うんですけど。
セリフをスラスラ言う、ということだけが、俳優の仕事じゃない、と。
その世界に存在している、ということを、そこに映っているだけで表現できていれば、それでいいんだ、というか。
崔洋一演じる近藤局長の、馬に乗っている姿なんか、クールですよねぇ。
身体の揺られ方、とか、凄いリアル。
あとは、ビートたけし。
俳優としてのビートたけしっていうのは、なんていうか、いつも一緒なワケです。
髷つけてようが、スーツ着てようが、ステテコ着てようが。
姿勢悪いのも、そのまま。歩き方も話し方も、そのまま。
まぁ、そもそもどんな俳優も、そういうもんだって言えばそうなワケですけど。
しかし、それにしても、そのまま。
そういう土方歳三、ということで。
もちろん、いいんですけどね。
ただ、ちょっと「ズルい」な、なんて。
キャスティングの勝利、と言えばそうなんですけどね。
それが大島監督の“腕”と言えば、もちろんそうなんですけど。
トミーズ雅も、いい味だしてます。
この人も、そのままですけど。
ただ、トミーズ雅が演じる隊の幹部が、美少年に翻弄されるシークエンスは、ちょっと“面白い”んですよ。
しかし、笑っていいものかどうか、という戸惑いがあったりして。
画面の質感とかは、相変わらずずっと、緊張感に満ちたそれなワケで。
個人的には、そこが少しだけひっかかりました。
しかし、石畳(石階段)で夜中に彼が襲われるカットは、最高にクールです。
あれはいい。
要するに、そういうシーン/カットを魅せる為の装置、という感じなんですかねぇ。
逆に、ラストの、なんか幻想的な方に振り切っちゃってるシークエンスは、あまり好きじゃないです。
見事ではあるけど。
しかし、新撰組、という、男だけで組織された集団が陥った(と、ここでは敢えて書きますが)、“粛清”という罠は、大島渚が取り上げる以上、各種の政治(的)組織の暗喩と、それらへのメッセージ、という意味合いを、観る側はどうしても投影してしまうワケで。
なんせ、“遺作”ですからねぇ。
う~ん。
あんまり「大島監督」という切り口だけで語らない方がいいのかなぁ、と、観終わった今も、悩みながら、このエントリーを書いています。
かといって、作品自体の感想を書き連ねる、というテンションにもならない、というのも正直なアレで。
良い作品である、というのは、感覚としては分かるんですけど。
あまり語らせてくれない、というのが、一番しっくりくる感想でもあって。
う~ん。。。
まだ(俺の)修養が足らんなぁ、と。
まだまだ語るには早い、と。
そういう作品なんだと思います。
はい。
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